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ウォルター・ヒル『ラストマン・スタンディング』 [afterAtBL]

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 ウオルター・ヒルによる黒沢『用心棒』リメイク。期待に胸をふるわせて観に行った。開巻、土ぼこりの荒野、メキシコ国境近くのテキサス。アウトロウが一人、ナレーションが重なって、思い出すのは『ヴェラクルス』だった。
 ライ・クーダーによるタイトル・バックはオリジナルのテーマ音楽を巧みに〈翻案〉した。

 時代は禁酒法の最盛期、舞台となる街はまったくの西部劇ふうだ。武器はオートマティック拳銃とトムスン短機関銃。
 リメイクといっても、先行してマカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』(これはパクリだった)があることは有名だ。元の作品だって、ハメットの『赤い収穫』と『ガラスの鍵』からの換骨奪胎なのだ。誰でも知っている話をつくり直すのもご苦労さんなことには違いない。
 観客は何が起こるかで固唾を呑むことはない。どんなニュー・ヴアージョンを観せてくれるかだけを期待している。それも巨額の製作費を使ったハリウッド製の決定版を要求しているのだ。
 モロッコの或る映像作家がいうように「ハリウッド・スタイルの映画の文化的普遍性は暴力的につくりだされたものである」ことが疑いえないにしても――。

 元版はアメフト型の殺陣を発明し、10秒で10人斬ったシーンなど数々の伝説をつくる。パクリ版だってスタイリッシユな転換に見るべきものがあった。
 さてハリウッド拳銃アクションの職人ヒル版はどうか。とりあえずはヒル自身の『ダブルボーダー』に似た情感に仕上がっている、とはいえる。そしてメキシコ女を助けるヒーローの甘さは、ライ・クーダー音楽でどうしても連想してしまう『ボーダー』にそっくりだ。
 銃弾に破壊された肉体から血のりがぶっとぶというペキンパー・スタイルは意識的に避けられたようだ。血は、ブルース・ウィリスがリンチで顔をボコボコにされる場面以外は抑制されている。
 その替わりに、射たれた身体そのものがぶっとぶ。最初の決闘で、ウィリスに十何発ぶちこまれたギャングが10メートルほどぶっとんでいく。これでこの映画のスタイルは見当がついた。香港ドンパチ・フィルムとロバート・ロドリゲス映画の様式である。
 これでいいのかねと正直ガッカリした。
 ナレーションは計算違い。モノローグがだんだんうるさくなる。カタキ役がどうも……。クリストフアー・ウオーケンもキレ方が半端で精彩に欠ける。
 不満たらたら、暴力的な映画と暴力映画は別物だといっても、興奮させられる1時間40分だった。  

『ミュージックマガジン』1997.2

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StevSwitte

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by StevSwitte (2019-06-22 12:06) 

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