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ゾンビの夜明け [afterAtBL]

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 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド最終版』のタイトル・バックには、三十周年記念の一文字があってびっくりさせられる。一九六八年に製作されたスプラッタ・ホラーの古典的作品も今観ればのんびりしたテンポのモノクロ映画だ。
 監督ジョージ・A・ロメロ『ゾンビ』で一躍有名になり、ゾンビ・シリーズの第一作もそれから再評価された。死者たちが墓場から死体安置所から蘇り(放射能の影響とされる)、生者を襲って人肉を喰らう。ゾンビたちは怪物ではあっても、動作はきわめてのろく、怖いのは群れをなして迫ってくるからだ。

 このビデオは、旧作にプロローグとエピローグを現代風に撮り足し、画面をデジタル処理によって鮮明にした「新作」決定版である。わたしが旧作を観たのは十数年前、アメリカ製ホラーがチープで元気だった頃。レンタル屋には、二社のテープが並んでいた。一本はモノクロ画面に薄い彩色をほどこしたものでどうにも見づらく、もう一本の無修正版も観た。
 都合、今回で三回目になったわけだが、画面は記憶よりもずっとクリアになっていたとはいえ、正直いって新たに撮り足された分のパーツについては感心しなかった。

 じつのところこの作品は十年前にリメイクされている。この九十年版『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(リビングデッドに「ナカグロ」の点がないことで差異化できる)をシリーズの集大成とする意見も有力だ。リメイク版の監督は、トム・サビーニ。知る人ぞ知るスプラッタ映画の特殊メイクアップの職人である。

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 ゾンビ・シリーズの歴史としては、六年前の『ゾンビ』ディレクターズ・カット版が最大のトピックだろう。『ゾンビ』のロメロ版カットは本物だった。つまり最初に公開されたバージョンはかなりの省略を伴った別の作品だったといっても過言ではない。ロメロ版『ゾンビ』は、わたしのオールタイム・ベストの十指に入る。その記憶があまりにも鮮やかなので、今回の「最終版」にも多いに期待したのだったが……。

週刊文春2000.4.3


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