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『ヴィドック』(ピトフ監督&脚本) [afterAtBL]

フィルム 斬新な映像による義人探偵
『ヴィドック』(ピトフ監督&脚本)

 元大泥棒の探偵ヴィドックはフランスではいまだ大衆的ヒーローなのだろう。
 本編は、義人探偵ヴィドックと鏡の仮面をつけた怪人の対決という大衆小説不変のパターンを駆使した一大娯楽作だ。監督と共同脚本は、これが第1作となるピトフ。

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 19世紀なかばのパリを舞台にした犯罪ロマンを近未来風の映像処理で仕上げた。原案と共同脚本は、『クリムゾン・リバー』のジャン=クリストフ・グランジェ。昔懐かしい探偵vs怪人の冒険譚を、いわば二重のフィルターをかけた犯人捜しの物語として楽しませてくれる。

 ヴイドックを演じるのはジェラール・ドパルデュー。開巻すぐ、犯人を追いつめた探偵は死闘の末、ガラ
スエ場の燃えさかるカマドに墜落してしまう。怪人の鏡の仮面には、死の直前の顔が映される。「死ぬ前に
素顔を見せてくれ」と頼む探偵に、怪人は仮面を外してみせる。
 ヴイドックの死は街をにぎわす大ニュースとなった。相棒を喪ったニミエは失意のあまり酒びたりになる。そこにヴイドックの伝記作者を名乗るエチエンヌが訪ねてくる。エチエンヌは言葉巧みに、重いニミエの口をひらかせる。――あれは二週間前のことだった。
 警視総監がヴイドックに難事件の解決を依頼に来たのだ。二人の男が稲妻に焼き殺された謎を調査してくれと。
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 ストーリーはここで、フィルムを巻き戻すように、探偵の捜査をふたたび辿っていくことになる。
 観る者は、探偵がすでに犯人をつきとめたこと、また、それによって命を落としたことを、あらかじめ知
らされている。知らないのは怪人の正体だけ。話をもういちど巻き戻す語り手役は伝記作者エチエンヌのも
のだ。彼は、探偵の足跡を辿る代理探偵でもあり、ゲームを先導するプレーヤーでもある。

 斬新な映像によって贈られる巧緻をきわめたゲーム空間は、はまったら病みつきになりそうだ。

『ミュージックマガジン』2002.2

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