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ゴダールの『パッション』 [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1983年11月23日水曜 晴れ
 ジャン=リュック・ゴダール『パッション』
 六本木 シネ・ヴィヴァン


 昔の愛だった。
 ゴダールの『パッション』は彼自身による次の数語に要約できる。

 映画への愛とはユダヤ人にとっての約束の大地への愛のような何かだ。それだけだ。ぼくがいいたい唯一のことは、偉大な映画を持てなくなってから、どの国もとてもうまく行ってることだ。エルサルバトルやポーランドのことを考えると辛くなる。
 『パッション』は、映画への愛が幾重もの屈折を通して、なお刹那に輝いてくるような痕跡にみちている。痕跡ではなく、テキストか。 

 どこまでもゴダールだ。
 どこまでもゴダールなその途は、必ず、「最低だ!」という自嘲に終わるほかない途だ。終わり……始まりのない唐突な終わり。

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 ――というような文章を書いていた。「ゴダさま命」だった季節がだらだらと終焉しつつあった時期。
 



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