『ミステリマガシン』ベスト3・2007年 [拾遺]
②『レッドパージ・ハリウッド』上島春彦
③『裏社会の日本史』フィリップ・ポンス
① 坂口安吾、ディクスン・カーと生誕百年の伊達男が並んだ2006年だったが、この人もそう。正直いって監督作としては『マルタの鷹』以外にそれほど特記したいものはなく(初めて観たのがインディアン標的西部劇『許されざる者』だったせいか)、『チャイナタウン』での快演の印象のほうがたちまさる。自伝はどうかね、とページをめくってびっくりだった。なんと彼の人生のほうが作品より数倍も面白いのだ。なるほど「撮られなかったフィルム」の物語はその実人生のなかにあったか。
② 赤狩り時代の映画作家について、これほど広範で立ち入った研究にふれるのは初めてだ。これまでの文書はどれも部分的かつ党派的でしかなかったわけだ。著者の執念と努力に脱帽した。この本を読むまで名前を知らない人物もいたが、複雑なネットワークのなかでそれぞれが脚光を当てられる記述をとおして既知の人のように輝いてくる。すべて世界には脚注的人物など一人もいないのだと納得。たんなるインサイド・レポートに終わらない濃密な人間ドラマだ。子供の時に観た『大砂塵』という映画のラストがなぜあんなにミザリーだったのか、長年の疑問も氷解。
③ 犯罪社会からみた日本の通史。学問的興味にとどまらず、寄せ場の実態などを捉えるジャーナリストの姿勢に独自のものがある。
ポーリン・ケイル『明かりが消えて映画がはじまる』 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して14 2004.01.15の日誌より
ポーリン・ケイルの映画評論集『明かりが消えて映画がはじまる』(山田宏一監修、畑
嬉しくなる本だ。
邦訳されたケイルの本『今夜も映画で眠れない』『映画辛口案内』は読んでいたはずだ
ここには、七十年代なかばに公開された作品への比較的長い作品論が収められている。
ケイルの最もたる魅力は、いさぎよい断言にある。寸鉄人をさす、という警句がほうぼ
たとえば《映画史の不幸とは、壮大な失敗作がつくられることではなく、それがつくら
これはベルトリッチ『1900年』論のマクラ。ケイルは、この映画の《マカロニ・ウ
チミノ『ディア・ハンター』を壮大な少年冒険ロマン、スコセッシ『タクシー・ドライ
たとえばジンネマン『ジュリア』を観たさい、わたしが感じた原作者リリアン・ヘルマ
あるいはフォアマン『カッコーの巣の上で』に、わたしはひどく失望しなかったにして
またデ・パルマに関するさりげない一行にもまいった。「彼もまた文化革命世代の映画
もっと早く、もっと身近に読みえていたら、アメリカ映画を観るための指南書として活
『ミステリマガシン』ベスト3・2005 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して13 『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2004年度。
①『明かりが消えて映画がはじまる』ポーリン・ケイル
②『68年の女を探して 私説・日本映画の60年代』阿部嘉昭
③『クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント』湯沢英彦
三冊とも、憑かれた者たちの記録だ。
ただし③に関しては、筆者がではなく、書かれた対象が、である。ボルタンスキーの謎に
やはり②である。極私的映画論。その凝視の執拗さ、分析的ディテールの集積で圧倒する
批評家とはどんなに下らない映画からでも達者な一家言を披露してみせる存在なのだ。
そうか。「68年の女」ってゴダール『気狂いピエロ』のアンナ・カリーナじゃなかった
オリヴィア・デ・ハヴィランド(1916-2020) [拾遺]
『ラスト・ワルツ』に追われて [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して12 2003.01.01の日誌より
『ラスト・ワルツ』のDVD版を観た。驚いたことに、この映画は、わたしのなかでモ
ニール・ヤングの『ヘルプレス』も、リック・ダンコとエミルー・ハリスの『エヴァン
しかし忘れ果てていた冒頭のシーンを観れば、ヴィム・ヴェンダースの『ブエナ・ビス
数あるロックバンドのなかで「ザ・バンド」と名乗ることの出来たのは彼らだけだった
そして『ラスト・ワルツ』という映画に、二十数年前のわたしが何を見ようとしていた
彼らのコンサート・アルバムでは『ビフォア・ザ・フラッド』がベストだ。しかし統一
あの頃は、時代がいくつかの「祭りの終わり」を語るセレモニーを必要としていた。と
挽歌が必要だった、いつの時代もそうだとはいえ。
わたしらはわたしらの肉体を果てもなく享受するいっぽうで巧妙に絞殺することを試み
『ラスト・ワルツ』はつくられるべくしてつくられたスコセッシ映画だった。『明日に
クリストファー・フレイリング『セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの悪童』 [拾遺]
クリストファー・フレイリング『セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの
一人の映像作家の墓銘に百人の無名の徒の訴えが含まれているように、戦後の一時期を
この本はちがう。統一性と細部の輝きとが見事なバランスをもって一人の映画作家の悲
こうした本は希有である。
監督としてデビューする前、1950年代後半において、レオーネの視線は複雑なコン
そして60年代なかば、レオーネは悪名高いパクリ映画『荒野の用心棒』を送りだす。
頂点に立ったイタリア製西部劇が巻き起こした60年代末状況についてはずいぶんと教
筆者はレオーネを最初のポストモダン作家と位置づける。そして最後の数ページを、い
またエリザベス・マクガバンが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のロ
わたしはこの本に深く満足するが、かといって、レオーネの作品をまた観なおしてみた
『ミステリマガシン』ベスト3・2002年 [拾遺]
『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2002年度。
1 『映画俳優 安藤昇』山口猛 ワイズ出版
2 『セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの悪童』クリストファー・フレイリング フィルムアート社
3 『わたしは邪魔された ニコラス・レイ映画講義録』スーザン・レイ編 みすず書房
映画というかつてあまりにも神々しかったロマンスに身を捧げた男たちの伝説記録が三
レイが思い浮かべる最良の墓碑銘は《生まれ/生き/阻まれた》というものだ。何から
『ミステリマガシン』ベスト3・2001年 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して09 『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2001年度。
『新編 美女と犯罪』山田宏一 ワイズ出版
『60年代アメリカ映画』上島春彦+遠山純生 エスクァイアマガジンジャパン
『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』ゼルダ・フィッツジェラルド 新潮社
映画は二時間かそこらで終わってしまう。しかし映画について書かれた文書は『美女と
一方、『60年代アメリカ映画』のキーワードは追憶と悔恨か。これは映画史(また使
話はとつぜん変わるが、ゼルダはわたしにとって奇妙なレベルでの「運命の女」だ。『
『ミステリマガシン』ベスト3・2000年 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して08 『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2000年度。
① 『哀愁の満州映画』山口猛 三天書房
② 『イサム・ノグチ』ドウス昌代 講談社
③ 『コオロギの眼』ジェイムズ・サリス ハヤカワ文庫
年末になると読み残した本のことを考えては落ち着かなくなる。ほうぼうのアンケート
『ミステリマガシン』ベスト3・1999年 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して07
『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。1999年度。今は集計式なの
① 『マカロニアクション大全』二階堂拓也 洋泉社
② 『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』杉作J太郎・植地毅 徳間書店
③ 『ハリウッド“噂の真相”』BRUTUS99.12.15 マガジンハウス
映画をあまり観なくなってから、映画本もあまり読まなくなったのだろう。三点もそろ
マカロニ・ウェスタンについてのウンチク本を読んでいて気づいたこと。ほとんどあの
一方の東映B級プログラム・ピクチャーの一群は、どうだったか。なんと、ほとんど観
『ブルータス』特集号は、あのSEX狂野郎にキャサリン・ジータ・ジョーンズさまが
他に『ヒバクシャ・シネマ』(現代書館)が本棚にあるけれど、これは真面目な内容が
『ミステリマガシン』ベスト3・1998年 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して06
『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。1998年度。今は集計式なの
① 『フリッカー、あるいは映画の魔』セオドア・ローザック 文藝春秋
② 『サム・ペキンパー』ガーナー・シモンズ 河出書房新社
③ 『アメリカン・ニューシネマの神話』遠山純生監修 ネコ・パブリッシング
デイヴィッド・J・スカル著『モンスター・ショー――怪奇映画の文化史』(国書刊行
映画そのものばかりでなく、映画についての本もお寒くなっている。などと言っていら
昨年は何か、「フリッカー、フリッカー」といたるところで宣伝班をつとめてしまった
③は、地味すぎる本のつくりで損をしているが、内容の濃さに感心した。写真など多く
『ミステリマガシン』ベスト3・1997年 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して05
『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。1997年度。今は集計式なの
① 『メイキング・オブ・ブレードランナー』ポール・M・サモン ソニーマガジンズ
② 『イギリス人の犯罪』ジャン・ルノワール 青土社
③ 『脳髄震撼』サミュエル・フラー 筑摩書房
①はブレランの超オタク本だ。読んでいるとシアワセな気分になる。まず「本編は二年
まったく別の話だが『ワイルドバンチ』のDVDソフトが発売されて、これに撮影時の
②ルノワールの小説はやはりルノワールの映画みたいだ、などとくだらない感傷にひた
③上に同じ。ただし固有名詞はフラー。
いやはや、こんなことをしていてはいけない。もっと勤勉にならなければ。
森崎東(1927-2020) [拾遺]
ディランの新作映画『マスクト・アンド・アノニマス』 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して03(2004.01.01の日誌より)
このところ、『マイ・バック・ペイジズ』を、64年のボブ・ディランのオリジナル、
かくて日々はめくられていく。
かくて今年も暮れ行く……。
Ah,but I was so much older then
I'm younger than that now.
ディランの新作映画『マスクト・アンド・アノニマス』は、ラテンアメリカのどこかに
二度も「らしい」を使ったのは、観る機会がめぐってきそうもないからだ。どうもこれ
話のアウトラインを聞くと、デニス・ホッパーが昔つくった問題作『ラストムービー』
ジェシカ・ラング、ペネロペ・クロス、ジェフ・ブリッジス、ジョン・グッドマン、ミ
https://atb66.blog.ss-blog.jp/2016-10-14
ディランの映画出演はやっぱり、ペキンパー・フィルム『ビリー・ザ・キッド/21歳
ペキンパーについて書かれた本によると、このシーンはまったくシナリオなしのぶっつ
映画のほうは、まあ、あきらめることにしてCDアルバムを繰り返し聴く。サウンドト
ただグレイトフル・デッドのところでは、どうしても黄昏のロードムーヴィといった色
この後ろ向きは、前向きなのかね。
はて?
深作欣二『博徒外人部隊』 [拾遺]
『北米探偵小説論』注釈 映画を探して02(2003.01.16の日誌より)
笠原和夫、深作欣二が相次ぐようにして逝った。笠原脚本なら『博奕打ち・いのち札』、深作監督作品なら『博徒外人部隊』がベスト。最も愛惜にあたいする。
それで気がついた。『博徒外人部隊』はきわめて屈折した深作版『ワイルドバンチ』だったのではないかと。ラストの殴り込みが四人vs数百人というデスペレートな闘いであるところも帳尻が合っている。ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナインと兄弟役のベン・ジョンソン、ウォーレン・オーツ――鶴田浩二、安藤昇に加えていつもは悪役定番の室田日出男、小池朝雄(沖縄の現地やくざの兄弟役の若山富三郎、今井健二は途中で退場してしまう)。メキシコに流れていったアウトロウと、日本復帰直前の沖縄にシマ荒らしに乗りこんでいった本土やくざという設定も近似だった。
死者の列。
『ハリウッド・バビロン』 [拾遺]
ケネス・アンガー『ハリウッド・バビロン』クイック・フォックス社 1978.7
『ハリウッド・バビロンⅡ』リブロポート 1991.3
数あるスキャンダル本のなかでも、これだけの毒々しいオーラを放っているものは見当たらない。
『北米探偵小説論』増補決定版(インスクリプト) 406p 参照
著者の名前は、一時期のアングラ・シネマの作り手として記憶していたが、これが代表作(?)になるか。
『ジプシーは空にきえる』the Gypsy are Found Near Heaven [拾遺]
昨日も書いたことだが、しつこく、もう一度。You Tube でのDLが出来なくなっている。DLボタンが消えた。8月末に試みた時には、オーケーだったが。
コンテンツを見つけた時の選択肢は、いま観るか、後で観るかの、どちらかしかない。まいったね。「後で必ず観る」リストに加えておいても、忘れてしまいそうだし、後で観るモードにして、時間をこしらえても、コンテンツ自体が消えているおそれが多々ある。
いろいろダウンロード・ソフトを試してみたが駄目。検索の途中で、同じことをやっている人の書きこみを見つけた。やはり、本格的に駄目らしい。
「規制」はここまで及んできたか。
フリーソフト探しは無為に終わった。不要のアプリは速攻で削除したんだが……。今朝、気づくと「日本語入力ソフト」がおかしい。あんのじょう Baidu IMF が勝手に、タスクバーに入りこんでいた。ほんとに、このソフトは悪質だ。おまけに、アンインストールが面倒きわまりない、ときている。
というわけで、やっと You Tube から『ジプシーは空にきえる』を観た。30年ぶり。
画質は粗いし、字幕も音声と少しズレた箇所があったが、我慢。あとは画像で。英語字幕が真ん中下部に入っているのが You Tube 経由のもの。画質の頼りなさがわかるでしょう。
なお、コンテンツ・ページの下部には、iTunes Store と Google Play をとおした「モスフィルム」の商品カタログへのリンクが並んでいる。まあ、つまり、 You Tube にアップされた動画は、ちょっと質をセーヴした「見本品」というわけだ。こちらは、間違えて、シェアして、広告塔になってしまった。