30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1984年5月19日土曜 晴れ
 ブライアン・デ・パルマ『スカーフェイス』



 新宿

 これがデ・パルマ映画のベストだ。
 こけおどしのホラー映画作家が悪趣味で節操のないギャング映画作家になった。

 リメイク映画を捧げられたハワード・ホークス=ベン・ヘクトもさぞかし魂消けたことだろう。



 三時間のフィルム・ノワールに三百個(?)のFuck youのセリフ。
 ドバドバの血のりと機関銃弾。
 アル・パチーノの人形芝居のように大げさな過剰アクション。

 そしてあちこちにあざとく仕掛けられている政治的偏向の断片。
 やっぱりオリヴァー・ストーンの脚本だ。
 流入するキューバ難民にたちはだかるアメリカ帝国主義という明快きわまる図式。

 これはまさしくデ・パルマ=ストーン=パチーノの最強作品だったのだ。

  Gina And Elvira's Theme.mp3
 そして、映画そのものとは離れて忘れられないこの曲。