30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1985年9月14日土曜 曇り
 タウフィーク・サーレフ監督・脚本『太陽の男たち』
 原作ガッサン・カナファーニ
 御茶ノ水 日仏会館ホール





 トラックの給水タンクの中に潜んで密入国をくわだてる三人の男。
 太陽に焼かれる地獄の釜。
 これは一つのシンボリックな寓話だ。
 地球の上をヴィザもなく彷徨う難民の運命の物語は、今日も変わることなく続いている。

 1972年にテロによって殺されたパレスティナ人作家カナファーニの存在そのものが、二十世紀後半という時代を象徴していただろう。
 当時、来日したパレスティナの詩人マフムード・ダルウィーシュが雄弁に語ったとおり――


 『現代アラブ文学選』1974創樹社には、カナファーニの代表作「ハイファに戻って」、評論「占領下パレスティナにおける抵抗文学」、ダルウィーシュの詩「パレスティナの恋人」などが収録されている。