スパイク・リー『モ' ・ベター・ブルース』90年製作
 1991年2月23日土曜
 単独で何の期待もなく観たなら、失望ももっと少なかったろう。

 しかし『ドゥ・ザ・ライト・シング』の次回作という先入観なしには、この作品にむかえなかった。
 前作からの進化までは望まないにしても、同レベルの余韻くらいは無意識に要求しているわけだ。


 この作品の限界とは何か。
 リーの示したジャズ観の月並みさ、とくにジョン・コルトレーンを「引用」するさいのセンチメンタリズム。
 そしてデンゼル・ワシントンがまったくジャズマンに見えないこと。
 その二点に尽きる。

 『トレーニング・デイ』までのデンゼルは、正直なところ、黒人にさえ見えなかった。
 シドニー・ポワチエよりももっと白人に見えた。


 比較するのはよくないと知りつつ、クリント・イーストウッド監督、フォレスト・ウィテカー主演の『バード』を思い浮かべてしまう。
 まったく問題にならないくらい『バード』のほうが優れているのだ。