マリオ・ヴァン・ピーブルズ『バッド・アス』

2005年10月6日
 『バッド・アス』を観るまで、10年以上あいてしまったわけだ。
 この10年の落差は大きすぎる。
 レイトショーの単館上映で、客もまばらだった。
 『スウィート・スウィートバック』の制作インサイド・ストーリーだ。
 メルヴィンの役を息子マリオが演じた。
 閑散とした上映館(ポルノ専門)が、口コミで集まってきた客であふれてくるシーンは、やはり感動的だ。
 彼らのほとんどはブラック・パンサー党員だった。

 

 「メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは映画界のマルコムXだ」とする異見もある。

 父親との葛藤と和解とは、ブラックシネマの重要なテーマの一つ。
 そこに普遍への通路があった。
 その点では、マリオ・ヴァン・ピーブルズはよく頑張ったといえるだろう。
 最近は、役者としても精彩なかった。
 この作品で、親父メルヴィンを演じて、親父と重なってくる部分がやはり、息子マリオのベスト演技。
 皮肉なことだ。
 おまけに、これは、監督作品としても、彼のベストではないか。
 ベスト・パフォーマンスとベスト・フィルム・メイキング。それが70年代の伝説的映画への讃歌か…。
 10年(今となっては、さらに10年の加算!)の落差に、ますます居心地悪くなる。