ジョン・フォード『シャイアン』

 1965年に観た。


 パンフレットには双葉十三郎による「フォード西部劇の集大成」という文章がある。
 事実はフォード西部劇の墓碑銘だったんではないか。
 最終最後の西部劇。
 それも作者の固有名詞はとりのけて、西部劇というジャンルそのものの最終最後の作品……。
 なぜならテーマが先住民絶滅政策にかかわってくるからだ。
 居留地での悲惨な現実から脱出していく種族と合衆国軍隊の戦闘。


 結局、「射撃の標的になる野蛮なインディアン」というタイプを廃して、史実を描こうとすると西部劇という伝統ジャンルは成り立たなくなるのだ。
 そのことをフォードは「最後の」作品によって実証したのではないか。


 そのせいか、主役のリチャード・ウイドマーク、ジェイムズ・スチュアート、キャロル・ベーカーはもちろん、
フォード映画には異色のアーサー・ケネディ、カール・マルデン、エドワード・G・ロビンソンなどよりも、
シャイアン族を演じたギルバート・ローランド、リカルド・モンタルバン、ドロレス・デル・リオ、サル・ミネオのほうがよほど印象に残っている。

 ということは。
 西部劇を観つづけたこの個人的なメモリアルも『シャイアン』によって閉じられる?

 たしかに原則的にはそうに違いない。短いあいだであった。
 あとは付け足し、注釈になるか。
 いや、じつは注釈のほうが本体になるふうな気配なのだけれど。