デヴィッド・ジャンセン『西部番外地』 [西部劇・夢のかけら]
南北戦争の時代。北軍の捕虜収容所から脱獄した男デヴィッド・ジャンセン(仇名はマッチョ)。相棒のメキシコ男ペドロ・アルメンダリス・Jrとともに、自分を騙したリー・J・コッブを捜す旅に出る。その途上、新婚の若い男デヴィッド・キャラダインを、シャンパン一瓶をめぐって、撃ち殺してしまう。その場は、正当防衛でおさめるが、若妻ジーン・セバーグは復讐を誓い、マッチョに賞金をかける。彼女が最初に頼ったのは、宿敵のコップだった。
ジャンセンとコップとの宿縁がメインの逃亡劇になるかと思ったら、二人はあっさり出会って対決し、宿敵は退場(どうもわかりにくい展開だ)してしまう。セバーグは次に、酒場の成金男ジェームズ・ブースを頼るが、そこにマッチョと相棒が偶然その酒場に入ってくる(どうもお手軽な展開すぎる)。若者ボー・ホプキンスを使ってマッチョを捕らえようとするが、酒場は大乱闘となって相手を逃してしまう。
セバーグは単身で復讐相手を追っていく……。
追う者と追われる者は、奇妙な同行の「旅」をともにする。さて、そこからが、「どうして、こんな話になってしまうの?」の連続で……。
逃亡者・相棒・復讐者が絡み合う心理劇のようなややこしい展開。『明日に向って撃て!』にならったふうなところもあるが。
演じるのが、「逃亡者」ジャンセンと「ペルーの鳥」セバーグだからか。ストーリーを掴もうとするこちらまで意味不明に感染する。
殺し合いの果てに、愛し合うことになる二人! なんと、これは、『片眼のジャック』と同種の、ひたすら神経衰弱ぎりぎり番外地ウエスタンの記念碑的作品になるしかなかったようだ。
冒頭の収容所暴動のスペクタクルは、純然たるマカロニ風。こんな結末になるとは思ってもみなかった。いや、話にはつづきがあって、愛し合う二人が群がる賞金稼ぎたちに追いつめられて、やっと幕切れとなる。
『群盗荒野を裂く』 [西部劇・夢のかけら]
セルジオ・レオーネ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』 [西部劇・夢のかけら]
『夕陽の挽歌』 [西部劇・夢のかけら]
監督 ブレイク・エドワーズ 主演 ウィリアム・ホールデン
朝、BSをつけたら遭遇。朝食のあいだだけ部分的に観る。
バディの若僧役が誰だったか、思い出せず。
ホールデンは『ワイルドバンチ』の延長といった役どころ。
日曜のこの時間帯、先週はクラウス・キンスキーのマカロニものだった。
『映画の巨人 ジョン・フォード』 [西部劇・夢のかけら]
チャン・ドンゴン『決闘の大地で ウォリアーズ・ウェイ』 [西部劇・夢のかけら]
J・リー・トンプソン『マッケンナの黄金』 [西部劇・夢のかけら]
J・リー・トンプソン『ホワイト・バッファロー』 [西部劇・夢のかけら]
『トマホーク ガンマンvs食人族』 [西部劇・夢のかけら]
『西部劇の作家たち』1972.7 [西部劇・夢のかけら]
『西部劇の作家たち』1972.7 キネマ旬報『世界の映画作家』シリーズの一冊。
フォード、ホークス、ペキンパー
このジャンルに関して、作家論の系列の本は珍しかった。
ジョン・フォード、ハワード・ホークスと並んでサム・ペキンパーの名前があるのも奇異な感じがする。
ペキンパーは「遅れてきた」作家だった。
この本が出た時点では、いくつかのB級作につづいて『ワイルドバンチ』『ケーブル・ホーグのバラード』があるだけだった。 『ケーブル・ホーグ』は『砂漠の流れ者』というタイトルだったし。
『ジュニア・ボナー』も『ゲッタウェイ』もまだ公開されていなかった。
フィリップ・フレンチ『西部劇・夢の伝説』 フィルムアート社 1977.1 284p
西部劇の理論書みたいなのは敬して遠ざけていた。
これだけなぜか一冊ある。
同じ著者の『映画のタイクーン』に感心していたので、買った。
しかしテーマ主義の強いアプローチにはあまり共感できず。
こうした「研究」もまた落日の産物なんだろう。
西部劇はもう、観るものではなく懐古する対象となってしまった。
『oh! 我らがB級映画』
『季刊 映画宝庫』B級映画大全の一冊 1977.10 芳賀書店
適度な(?)マニアック性が気に入り、手元にけっこう残してある雑誌。
全ページではなく、半分が西部劇関連。
サム・ペキンパー第一作『荒野のガンマン』の特集も。
この雜誌だと、B級あつかいがリスペクトなのらしい。
けれど、ペキンパーを評するのに「遅れてきた作家」というのでは圧倒的に足らない。
彼は西部劇ブームが事実として終わったときにこのジャンルを背負わされた。
落日のヴァニッシング・アメリカンだったのだ。
『季刊 映画宝庫』さらば西部劇 1978.7 芳賀書店
『荒野の決闘』のシナリオ採録
『駅馬車』『シェーン』の原寸大ポスターの付録
など盛り沢山だが、B級センスの追求というテイストは変わらず。
スター名鑑に出てこないB級スター名鑑
日本人の知らないB級シリーズの数かずなど。
これにて、ウェスタンの項目は終わり。
キネマ旬報増刊 西部劇シナリオ決定版 [西部劇・夢のかけら]
ガンマン [西部劇・夢のかけら]
この雑誌の他の号のことなどはまったく知らない。
特集号のみが手元にある。
映画専門誌の特集と比べても遜色はない。
西部劇映画史60年のグラビアページが充実している。
とくに戦前製作の作品データ50ページ分は、これでしか見られないスティールを満載。
お宝度もピカ一だ。
増刊ヒッチコック・マガジン『GUNのすべて』1961.5 『続GUNのすべて』1962.1
これはミステリ専門誌による特集。
「拳銃のことは、何も知りません」と中原弓彦(小林信彦)の編集後記にある。
西部劇ブームとモデルガン・ブームとが一体だったことをよく語る文献。
拳銃学入門、西部拳銃史、テレビ西部劇への招待 などの記事が並ぶ。
TV西部劇シリーズは、最盛期で週に二十本くらいあった。
モデルガン・ショップが新京極にあって、いつも指をくわえて見ていたものだ。
西部劇スタイルの抜き撃ちやガンスピンを趣味にする人たちも大勢いたのだった。
『西部劇の世界』など [西部劇・夢のかけら]
『西部劇の世界』 荒地出版社 310p カバー
これは1972年の新装増補版のもの。
親しんでいたのは、1960年8月刊の初版。
双葉十三郎の「西部劇ベストテン」の文章なんかは、暗記するくらいに読み耽ったのだった。
亡くしてしまったので、増補新版を買ったのだけれど、どこかしっくりとこない。
『西部劇読本』映画の友臨時増刊1960.10
表紙は『アラモ』から。
ジョン・ウェイン(デイヴィー・クロケット)とリチャード・ウイドマーク(ジム・ボウイ)。
巻頭には「西部劇天国ニッポン」とある。
これをピークに三年ほどブームの時代がつづいた。
雑誌の特集号をせっせと買っていたのがまだ保存されていた。
これは一冊目なので、上記の『西部劇の世界』ともどもお宝本となっている。
西部劇ベストテン(製作年度順) 『西部劇読本』の選出
駅馬車 ジョン・フォード
荒野の決闘 ジョン・フォード
西部の男 ウィリアム・ワイラー
黄色いリボン ジョン・フォード
赤い河 ハワード・ホークス
ウインチェスター銃73 アンソニー・マン
真昼の決闘 フレッド・ジンネマン
シェーン ジョージ・スティーヴンス
大いなる西部 ウィリアム・ワイラー
リオ・ブラボー ハワード・ホークス
『西部劇の世界』の選出もほぼ同じ。
『駅馬車』と『西部の男』が抜け、代わりに次の二本。
ヴェラクルス ロバート・アルドリッチ
OK牧場の決闘 ジョン・スタージェス
前号は完売、品切れ。
名作百選リスト TV西部劇特集 などの記事。
充実した内容である。
『ララミー牧場』の広告も懐かしい。
『ララミー牧場』本編よりもずっと愉しみだったのは、淀川長治の「西部こぼれ話」のトークと、チンパンジーの出るバャリース・オレンジのCM。
西部劇ベストテン [西部劇・夢のかけら]
西部劇ベストテン
この切り抜きの出所は不明。
たぶん『荒野の七人』のサントラ ソノシート付きムックからのもの。
版型がタテ19センチ、ヨコ21センチだから、そう推定するだけ。確信はなし。
テレビ西部劇の栄光時代
同じ切り抜きのウラページ。
61年だと思うが。
週に17本も放映されていた。
『ローハイド』『拳銃無宿』『ララミー牧場』『シャイアン』など。
TV西部劇が子供の精神世界を決定してしまったのだ。
おかしなもので、TVシリーズというのは、ヒット作が出ると必ず双子の弟みたいなそっくりシリーズが作られる。
スティーヴ・マックイーンの『拳銃無宿』には、ニック・アダムスの『反逆児ジョニー・ユーマ』
前者が銃身を短く切りつめたライフル、後者は同じく短くしたショットガン。
クリント・ウォーカーの『シャイアン』には、タイ・ハーディンの『ブロンコ』 という具合。
主題歌まで似せてあった。
ちなみに、マイベストは。
ワイルドバンチ サム・ペキンパー
リオ・ブラボー ハワード・ホークス
ヴェラクルス ロバート・アルドリッチ
赤い河 ハワード・ホークス
駅馬車 ジョン・フォード
荒野の決闘 ジョン・フォード
シェーン ジョージ・スティーヴンス
大いなる西部 ウィリアム・ワイラー
OK牧場の決闘 ジョン・スタージェス
ゴーストタウンの決闘 ジョン・スタージェス
プロフェッショナル リチャード・ブルックス
ラルフ・ネルソン『ソルジャーブルー』 [西部劇・夢のかけら]
ラルフ・ネルソン『ソルジャーブルー』 1971年
個人的な追憶は『ワイルドバンチ』の項目で見事に幕を閉じる。
西部劇・夢のかけら、あとの一回はつけ足しだ。
『明日に向かって撃て』『アントニオ・ダス・モルテス』など、印象深い作品はこの間にはさまっている。
けれど、どちらも純然たる西部劇とはいえないだろう。
ニュー・ウェスタン・シネマ、もしくは、南米西部劇。
じつのところ、『ソルジャーブルー』の内容は、あまり記憶に残っていない。
ラストの合衆国軍隊による先住民虐殺シーンを除いては……。
しかし、これはあまりにも有名すぎて、作品を観たことのない者すら話題にのぼらせる場面だ。
もしかしたら、わたしはこの映画を観たと記憶しているだけで、じつは観ていないのかもしれないと思うことがある。
観なくてもよかった。
それ以前に西部劇という夢の神話、かつてあれほどにも輝いていた神話は粉ごなに崩れ落ちてしまっていたのだから。
あえてこのフィルムが総仕上げをするまでもなく。
サム・ペキンパー 『ワイルドバンチ』 [西部劇・夢のかけら]
リチャード・ブルックス『プロフェッショナル』 [西部劇・夢のかけら]
黄金時代を過ぎて、昔ながらのアクション活劇という意味では、唯一この作品しかない。
メキシコ革命軍くずれの山賊にさらわれた牧場主の妻を奪還すべく四人の特殊工作プロが雇われた。
単純明快な話だ。
リーダーにリー・マーヴィン、爆破専門のバート・ランカスター、兵站部門のロバート・ライアン、遊撃部門のウッディ・ストロード。
拉致される女にクラウディア・カルデナーレ、賊の頭目にジャック・パランスという配役。
リー・マーヴィンが最高だったな。
『ドノバン珊瑚礁』『殺人者たち』『ポイント・ブランク』など、これがマーヴィンの最盛期の華。
それと、あまり作品に恵まれなかったストロードの輝き。
ヘンリー・ハサウェイ『ネバダ・スミス』 [西部劇・夢のかけら]
ヘンリー・ハサウェイ『ネバダ・スミス』
観ているほうの都合でいえば、スティーヴ・マックイーンのワンマン映画なんだが、助演陣の層の厚さも凄い。
ブライアン・キースのガンマンに特訓を受ける前半は文句なし。
一人、二人と仇討ちをやってのけるところまでは快調だった。
ここまでなら、何回観ても素晴らしい。
後半になって復讐者の内面にもくもくと迷いが生じてくると……。
なんとも歯がゆい展開に苛々しどおしだった。
ストレートな復讐劇でまとめあげればと望むのは野次馬根性か。
すでにそうした傾向は「過去」のものになっていたということか。
考えてみればマックイーン西部劇の後期は、だいたいこんな余分の注釈で統一感の薄い話になっていたみたいだ。
晩年の『トム・ホーン』がいい例で、脱力する話が終わった後のスクリーンに「これは実話である」なんて但し書き出てくる。
アンチ・カタルシスが後あとまで尾を引く。
10年くらい前、『拳銃無宿』のフルカラー版DVDが発売になった。
オリジナルのモノクロを加工した着色版だ。
シリーズの最終回が忘れられない。
護送した女の囚人とのあいだに芽生える恋。賞金稼ぎの足を洗って新たにやり直そうと二人は約束する。
けれども待っているのは女の死だった。
ジョッシュの、魂を抜かれたような表情がいつまでも心に残った。
マックイーンのベストはやっぱり『拳銃無宿』
二は『荒野の七人』
三のセレクトに迷う。『シンシナティ・キッド』か『ジュニア・ボナー』か『ゲッタ・ウェイ』か……。
純然たる西部劇といえないものばかり。
仕方がない。『ネバダ・スミス』の前半のみを三位に。
サム・ペキンパー『ダンディ少佐』 [西部劇・夢のかけら]
中学卒業のころに観た。
西部劇への派生的な思い出がふくらむのは、やはりペキンパーという存在のため。
彼の活動が60年代なかば(もう西部劇が終わってしまった時代)から本格化してくるからだ。
『ダンディ少佐』は初のB級ではない大作。
キャストは豪華だし、制作費もかかってる。
背景は南北戦争下。
アパッチ討伐に向かう北軍が捕虜の南軍兵士を一時的に討伐部隊に加える。
敵の逃げこんだメキシコではフランス軍の駐留部隊が新たに立ちはだかってくる。
こちらを撃破すれば、あちらが出てくる。
前面の敵、後方の敵、そして内部の敵……。
三つ巴・四つ巴になった戦闘シーンは目まぐるしく、華麗だ。
ーーといいたいところだが、ナンだかややこしいだけって感じでもある。
まあ、ともあれ標準的な娯楽作にはなっている。
ペキンパー神話の一エピソードでなかったら、とうに忘れ去っていたかも。
主演のチャールトン・ヘストンは史劇スターのイメージが強いけれど、西部劇が似合わないこともない。
少なくとも作品には恵まれているようだ。
最近では、マイケル・ムーアのドキュメンタリでおちょくられたように、ライフルをかついだ老いぼれゴリラになっている。
あれとは別人。ともかく若いし。
けれどこの映画では、南軍捕虜の指揮官リチャード・ハリスや、片目の斥候ジェイムズ・コバーンに見せ場をさらわれてしまった。