エディ・マーフィ [BlackCinemaスター]
『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』 97年5月1日木曜
『ナッティ・プロフェッサー』 97年8月23日土曜
スタンダップ・コメディアンとして映画界に進出。
ブラックシネマの時代が到来するより以前にスターの位置にあったので、強いメッセージ性などとは無縁で過ごしてきた。
映画デビュー作『48時間』が、白黒コンビのバディ・ムーヴィーの走りであったことは、以降のハリウッド・スタイルを予言しているだろう。
ただ『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズがいかにくだらなかったとしても、黒人スターをメインにすえた人気シリーズだったという意味は大きいだろう。
ベストは『48時間』と『ナッティ・プロフェッサー』
『ネゴシエーター』 (1997) 『ショウタイム』 (2002)
『アイ・スパイ 』(2002) 『ホーンテッドマンション』 (2003)
ウェズリー・スナイプス [BlackCinemaスター]
演技派で売り出して、気の抜けた娯楽作で白人の相棒役で(二番手の)看板を張る、といったブラツクスター定番コースをとらなかったのがウェズリー・スナイプス。
もっぱらアクション路線でクリーンヒットを放っている。
『パッセンジャー57』
93年8月10日火曜
『ハード・プレイ』
93年11月11日木曜
『ライジング・サン』
94年8月6日土曜
『デモリションマン』
94年9月5日月曜
『ボイリング・ポイント』
94年11月3日木曜
『ドロップ・ゾーン』
95年8月24日木曜
『マネートレイン』
96年11月11日月曜
『ザ・ファン』
97年7月28日月曜
『ブレイド』 99年9月26日日曜
『アート オブ ウォー』 00年11月8日火曜
加えて、共演の白人スターに曲者ばかり並んでいるのも面白い。
『パッセンジャー57』のブルース・ペイン
『ハード・プレイ』『マネートレイン』のウディ・ハレルソン
『ライジング・サン』のショーン・コネリー
『デモリションマン』のシルベスター・スタローン
『三人のエンジェル』のパトリック・スウェイジ、ジョン・レグイザモ
『ボイリング・ポイント』のデニス・ホッパー
『ドロップ・ゾーン』のゲーリー・ビジー
『ザ・ファン』のロバート・デニーロ
『ブレイド』のスティーヴン・ドーフ、クリス・クリストファーソン
『アート オブ ウォー』のドナルド・サザーランド
などといった顔ぶれ。
最近はいささかパワーレベルがダウンしてきているが……。
巻き返しを期待しよう。
観落としていたのが、『三人のエンジェル』
スナイプス、スウェイジ、レグイザモ。女装の競演がナントモ……。
『ブレイド』シリーズは「非純血」のヴァンパイアが吸血鬼ハンターになるという設定。スナイプスの主演は三部作で終わった。
最新作は、『ギャロウ・ウォーカー 煉獄の処刑人』
マカロニウェスタンとゾンビ・アクションとホドロフスキー的悪趣味の合体。
自分の殺した相手が不死のゾンビとなって彷徨う、といったややこしい「オキテ」を定められた殺し屋の宿命。
これは、やはり『ブレイド』のヴァンパイア・ハンターの「煉獄」に通じているようだ。純血種ではない故に、自らの種族を裏切って敵対するしかない呪われた宿命を背負う男。
白人の支配する世界で、黒人が白人ヒーローの「代理」を努めることは可能なのか。その矛盾をつきつめたところに出現する逆説的なヒーローだ。
ローレンス・フィッシュバーン [BlackCinemaスター]
ローレンス(ラリー)・フィッシュバーン
『オセロ』95年製作
1997年8月2日土曜
黒人トップスターの第二段階の試練は、 『リーサル・ウェポン』シリーズのダニー・グローバーがいい例だが、白人スターとコンビを組んだオバカなバディ・ムーヴィーで一般的な認知を受けることだった。
ブラック・ナショナリズムはそこで、ティシュペーパーのようにもみくちゃにされるというわけだ。
フィッシュバーンの場合、それは遅れて『マトリックス』シリーズに集中して起こってきた。
『オセロ』は大きな期待作だったのだが。
何が悪かったとも指摘は難しい。
初めてオセロ役を演じうる演技派黒人スターに加えて、ケネス・ブラナーのイアーゴー役。
こちらの鑑賞力がおよばなかった、ということにしておこう。
理由 (1995)
キング・オブ・ニューヨーク (1990)
やはり、最近のものは「……」だな。
アイス・キューブの『ライド・アロング』に登場してきた肥満ぶりには目を疑った。
笑うに笑えず。
往年のマーロン・ブランドか、はたまたルトガー・ハウアーか、あるいは格闘技時代の曙太郎か。
マッツ・ミケルセンのハンニバル・レクターによるTVシリーズ『ハンニバル』では宿敵のFBI捜査官役。
これは、べつに観たくもないね。
どこかで予告篇をチラ観した『Standoff』に期待しておく。
モーガン・フリーマン [BlackCinemaスター]
『セブン』96年2月1日木曜
フリーマンは遅咲きのスターとして知られる。
けれど、咲いてからも、作品に恵まれているとは決していえないような。
『セブン』がいい例だし、その後も『コレクター』とか『スパイダー』とか、どうでもいいような同工異曲のサイコものが続いた。果ては、 『ドリームキャッチャー』みたいなサイコ軍人役になる。
こういうのは、まあ、一口にいってしまえば、白人スターの代用だ。
『ボーン・コレクター』の四肢麻痺探偵と介護士コンビがデンゼル・ワシントンとクイーン・ラティファに置き換えられてしまったのと同じ。
原作の設定の白人を黒人に変えるという「暴挙」だ。
同様の例が、 『ノー・グッド・シングス』 。
これはハメットの探偵役をサミュエル・L・ジャクソンが演じて、びっくりさせられた。
『ボーン・コレクター』は、主役はいいとこなしだったけれど、ラティファとアンジェリーナ・ジョリーが大変身の大ブレイク。
原作をボロクソの電気紙芝居に変えちゃいながら、じつに不思議な作品だった。
あの、アンジョリがねー、って見直したもんだが……。
はてさて。モーガン・フリーマンのことだった。
やはり『ドライビング miss デイジー』の当たり役と。
『許されざる者』の、老いた賞金稼ぎ、引き金を引けなくなった凄腕のライフルマンと。
この二本に尽きるか。
おっと、『ミリオンダラー・ベイビー』を忘れてはいけない。
あの穴だらけの靴下。
そうだ。『ラストベガス』 を、まだ観てなかった。
デンゼル・ワシントン [BlackCinemaスター]
『ミシシッピー・マサラ』 92年1月11日土曜
『リコシェ』 92年8月3日月曜
『グローリー』 94年6月19日日曜
『バーチュオシティ』 97年2月9日日曜
『トレーニング・デイ』 02年10月12日土曜
などなど。
このうち映画館に行ったのは数えるほど。
他の作品も含めて、秀作ばかりでないのは当たり前といえば当たり前か。
『バーチュオ・シティ』の画像は、テリー・ビッソンによるノヴェライゼーションの翻訳本カバー。
映画のほうは、 『クイック・アンド・デッド』で売り出し中だったラッセル・クロウが光っている他はどうってことないB級。
ノヴェライゼーションは本編よりもずっとずっと素晴らしい。さすがビッソン。
しかし、『リコシェ』もそうだが、こういう正義派の型にはまったキャラクターが自然体に似合ってしまうんだよな、デンゼルは。
ベスト演技はやっぱり、賞を取った『グローリー』と『トレーニング・デイ』だ。
こちらが地で、正義のヒーロー役はハリウッド向けの仮面なのか。と思っていたい。
ブラックスター [BlackCinemaスター]
ブラックシネマの時代は、ブラックスターズの本格的な開花期でもあった。
70年代のブラックスプロイテーション時代のように、エロとアクションで売りだすのではなく、黒人の尊厳を訴えるドラマの演技が求められたのだった。
エディ・マーフィ ウェズリー・スナイプス ウィル・スミス
サミュエル・L・ジャクソン ヴィン・ディーゼル ダニー・グローバー
マリオ・ヴァン・ピーブルズ アイス・T アイス・キューブ 2PAC
スヌープ・ドッグ DMX キューバ・グッティングJr
ヴィング・レイムズ デルロイ・リンドー ルイス・ゴセットJr
そして、
パム・グリア ガボレイ・シディベ
ついに観たぞ [BlackCinema]
ついに観た。
ダイジェスト版を観て何ヶ月かの後、フルムーヴィーのファイルをゲットした。
リチャード・ライト『Native Son』 1951
ライトは、この時42歳。
無知で粗野な黒人青年の役を演じるには、かなりの無理があった。
ということは、ポスターやスティールの図柄にも明らかなごとく、 大げさにトラジコミカルな演技で登場するしかなかったのだ。
ライトは、この後、『アウトサイダー』を書く。
早すぎる死が訪れたのは1960年。CIAによる謀殺説もあった。
このあたりのことは、おおまか『北米探偵小説論』に書いている。
リチャード・ライト『 Native Son 』 [BlackCinema]
ホームページ更新日誌2013.01.10より
捜してみるもんだ。
リチャード・ライトが自作に主演した『 Native Son 』1951 を発見したのである。
残念ながら、全編ではなくて、5分ほどのパーツに限られるけれど。
ライトは、共同シナリオと主演を担当。
黒人青年一家の貧しい暮らしから始まる導入部と、逃亡するビガーが警官隊に追いつめられるシーンと。
わずかではあるが、主人公に扮した作家のすがたに、深い感慨をおぼえた。
とくに逃亡シーンは、キャグニーの『ホワイト・ヒート』を想起させるような効果で迫ってきた。
86年のリメイク作『ネイティブ・サン』でも、逃亡シーンの特別の工夫がこらされていたことを思い出す。
そのうち、奇特な方が、フル・ムーヴィーをアップしてくれるだろうか。
『ネイティブ・サン』 [BlackCinema]
リチャード・ライト『アメリカの息子』 [BlackCinema]
マルコム本、小ブームのなか、カルチャー系マガジンによるブラック特集が目立った。
エスクァイア日本版93.1 スパイク・リー特集
スタジオ・ボイス93.3
ブラック・パワーの歴史的背景については、こちらがいくらか上。
他にも「マルコム本」が十冊近くあるが、きりがないので、割愛。
1992年、93年。ラップとブラック・シネマがいわゆる一つの「最先端」であった時期がしばらくつづく。
しかし文学のブラック・コンテンポラリに関してのお寒い状況はまったく変わらなかった。
少し遅れて、トニ・モリスンやゾラ・ニール・ハーストンの選集が出たくらい。
後はジェス・モウリーの二冊だけ。
リチャード・ライト『アメリカの息子』 Native Son
アフリカ系アメリカ人文学の最高作。
原作翻訳本はずっと入手困難のままだ。
『マルコムX自伝』 [BlackCinema]
『マルコムX自伝』
自伝刊本 三種
邦訳初刊 半分の抄訳版 68.7 河出書房
とりあえず手に入れた原書ペーパーバック 66年の7刷
完訳版 93.2 河出書房
ブラックの地にエックス印はシルバーなんだが、画像ではわかりにくい。
映画公開を機にやっと完訳が出る。
この国での「マルコム人気」というのは、その程度のもの。
文庫版
スパイク・リー映画『マルコムX』サントラCD
Malcolm X the FBI File
これはもうタイトル通りの、FBIによるマルコムXの監視記録。
マル秘ファイルの公開。ほとんどトンデモ本だ。
数あるマルコム本のなかでもナンバーワンにぶっ飛んでいる。
お値打ちはともかく。
92年の5月17日、吉祥寺のパルコ・ブックセンターで購入。2801円であった。
MALCOLM X SPEAKS [BlackCinema]
MALCOLM X SPEAKS
マルコム演説集CD二枚組
企画・製作 ブルース・インターアクション
1992年11月29日、紀伊国屋で購入。4944円。
二枚目の「最後の演説」は、声に疲れがあり、しばしば咳によって中断されている。
当日の早朝に自宅が爆破されたからだ。
FBIもNYPDもガードを意図的にさぼっていた。果たしたのは監視任務だけだ。
銃撃による暗殺はこの一週間後、1965年2月21日だった。
ひところはどこに出かけるのも、これを聴いていたものだ。
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『ソウル・オブ・ブラック・ムービー』など [BlackCinema]
1992年、93年はブラックシネマの頂点となる。
ロサンジェルス暴動とスパイク・リー映画『マルコムX』の公開と。
参考書、便乗本も数多く出た。
『異人たちのハリウッド』 映画宝島91.12
『黒人学・入門』 別冊宝島EX93.11
『ブラック・ハリウッド』1993
Contents
Introduction
1 an Historical Perspective
2 Getting a Foot in the Door a Forty Year Ordeal
3 the Business of Making Films
4 Superstars Transcendending or Perpetuating Stereotypes?
5 a Look at Quarity
6 the Rise of the Independents
7 Into the Nineties
8 the Black Experience goes Mainstream
『ソウル・オブ・ブラック・ムービー』
―’70sブラックスプロイテーション、オリジナル・サウンド・トラック&ポスター・アートワークス
白夜ムック (Vol.83)
ブラック・カルチャー本のなかでは最高にマニアックな一冊。
ブームの時代からはっきりずれているところもマニアックの心意気か。
何しろ近い過去の90年代ブラック・ムーヴィーはまったく興味の対象には入っていない。
2003年版もある。
『スライ・ストーン Dance to the Music』 [BlackCinema]
『スライ・ストーン Dance to the Music』
DVD 新発売。気がかりなので、レンタルで観た。
モノは2008年の、オランダ作家によるテレビ番組用ドキュメント。
ただし、本年度(2015年)の追加シーンもある。
レンタル版だから、未発表ライヴ映像とか未公開インタビューとかは、残念ながら、付いていない。
作り手がものスゴイ「スライ・オタク」で、消息不明の伝説的ミュージシャン追跡というストーリーを大げさに押しつけてくるうえに、スライの伝記作家を称する双子の兄弟(作り手を上回る超スライ・オタクのおっかけ)をヒーローあつかいしているので、前半は、ちとしんどい。
ずいぶん前に、『リ・スライ』という CD を買ったことを思い出す。「Differnt Strokes by Different Folks」がサブタイトルだった。
長い時間の断絶をおいて、別のジェネレーションのもつ「音楽」体験との落差にまざまざと直面する想いだった。
ウッドストックで最も突出して輝いていたグループ。
その後、五年ほどで失速した。
ブラック・パンサー党(BBP)は「スタンド」をテーマ・ソングに採用した。
けれど、政治的急進主義からの介入は、あまりに貧しい引き回しでしかなかった。
BBP は、メンバーの白人との混成を批難し、
多額のカンパ要求と、
よりラディカルなプロパガンダ路線採用をつきつけてきた。
後のことは、お決まりの「転落」物語だ。
精神的迷走、家庭の崩壊、ドラッグによる拘引…。
60年代末のヒーローたちは、早すぎる死によって、伝説を美しく完成させていった。
ジミ・ヘンドリツクス、ジャニス・ジョプリン、オーティス・レディング…。
「30歳以上は信用するな」というテーゼの最高に雄弁で〈生きた〉サンプルだ。
スライには、その途はなかった。
スライ&ファミリー・ストーンの軌跡は、R&B と HIPPOP の橋渡しのような位置にあるのだろう。
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「ランニン・アウェイ」
これは、スライの妹ロージー・ストーンのボーカルだ。
ブラックシネマ ベスト10 [BlackCinema]
ブラックシネマ ベスト10
2 フレッシュ ボアズ・イェーキン
3 セット・イット・オフ ゲイリー・グレー
4 サバイビング・ゲーム アーネスト・ディッカーソン
5 レイジ・イン・ハーレム ビル・デューク
6 ボーイズン・ザ・フッド ジョン・シングルトン
7 ドゥ・ザ・ライト・シング スパイク・リー
8 ニュー・ジャック・シティ マリオ・ヴァン・ピーブルズ
9 クロッカーズ スパイク・リー
* トレスパス ウォルター・ヒル
スティーヴ・ジェイムス『フープ・ドリームス』 [BlackCinema]
ゲイリー・グレー『セット・イット・オフ』 [BlackCinema]
マリオ・ヴァン・ピーブルズ『パンサー』 [BlackCinema]
スパイク・リー『クロッカーズ』 [BlackCinema]
スパイク・リー『クロッカーズ』95年製作
1996年12月22日日曜
『ハスラー2 カラー・オブ・マネー』につづくマーティン・スコセッシとリチャード・プライスの監督・脚本コンビの実現になるはずだったのが……。
リーが脚本をブラック向きに書き直した。まるごと自分の作品にしてしまうリーの手腕は見事。
デルロイ・リンドーに注目。
画像は原作翻訳本のカバー。
プライスという人はシナリオではウェルメイドの一級品を書くのに、
小説となると『フリーダムランド』もそうだが、常識はずれに長大な作品に仕上げてしまう。
『クロッカーズ』の原作もそうで、ストーリーを犠牲にしてまで、延々たるドキュメンタリズムの密度で押しまくってくる。
モーガン・フリーマン『ボッパ!』 [BlackCinema]
ジョン・シングルトン『ハイヤー・ラーニング』 [BlackCinema]
ジョン・シングルトン『ハイヤー・ラーニング』95年製作
1995年9月4日月曜 恵比寿ガーデンシネマ
いわゆる学園もののドラマ枠に、ネオナチの台頭と新たな人種差別の根を浮き上がらせる。
主演格は、黒人のオマー・エップスではなく、白人のジェニファー・コネリーとマイケル・ラパポート。
黒人のみの集団劇で鮮烈な主張を前面に出したブラックシネマが、黒白混合のドラマに方向転換をみせていった。
成熟とみなすか、焦点がぼやけたとみなすか。
評価が分かれ始めた。
シングルトンは何をやってもスパイク・リーほどには狡猾ではないから。
教師役を演じたラリー(ローレンス)・フィッシュバーンが圧巻。
彼の存在によって何とか統一感は保つことができたようだ。
ボアズ・イェーキン『フレッシュ』 [BlackCinema]
アーネスト・ディッカーソン『サバイビング・ゲーム』 [BlackCinema]
ジョン・シングルトン『ポエティック・ジャスティス』 [BlackCinema]
ジョン・シングルトン『ポエティック・ジャスティス』93年製作
1994年3月29日火曜
ジャネット・ジャクソン 2PAC・シャクール
ドライヴインでホールドアップにあって射殺される恋人の後釜役が2PAC。
数年後に来た2PACとビギー・スモールの射殺事件を想えば、なんとも意味深の役柄ではないか。
ラスヴェガスで2PACは、デスロウ・レコードのプロデューサーだったシュグ・ナイトとともに銃撃され、死亡。
一部のメディアは、ウエストコーストとイーストコーストの「対立」を大げさに書きたてる。
銃撃犯の黒幕はビギー・スモールだという説は有力だった。その半年後に、ビギー・スモールも銃撃を受けて死亡した。
報復説の拡がりをとどめるものはなかった。
「真相暴露本」の犯罪ノンフィクションも何冊か出た。
世界を獲得したギャングスタ・ラッパーたちをめぐる根強い伝説がある。
成功と同時に起こってくる愚かな抗争劇。
それは、映画で描かれるドラッグ・ディーラー・キングたちの興亡そのままなのだった。
「もう沢山だ」という気分が蔓延したのも当然だ。
アレン、アルバート・ヒューズ『ポケットいっぱいの涙』 [BlackCinema]
マリオ・ヴァン・ピーブルズ『黒豹のバラード』 [BlackCinema]
マリオ・ヴァン・ピーブルズ『黒豹のバラード』93年製作
1993年10月27日水曜
ブラックシネマの最盛期に作られるべくして作られたブラック・ウェスタン。
マカロニのまがいものよりもっといかがわしい。
ピュアに真っ黒だ。
Too black, too strong.
この愚直なばかりの不器用さ。おやじメルヴィン(MVP)の出演が嬉しい。
ブラック・ウェスタンは、後に、シドニー・ポワチエとハリー・ベラフォンテが共演した『ブラック・ライダー』(1971)を観る機会があった。
監督も兼任したポワチエのギャンブラー・スタイルは、まったくのバッド・チューニング。
較べてみるまでもなく『黒豹のバラード』の志しの高さに打たれる。
マリオ・ヴァン・ピーブルズ『バッド・アス』 [BlackCinema]
2005年10月6日
『バッド・アス』を観るまで、10年以上あいてしまったわけだ。
この10年の落差は大きすぎる。
レイトショーの単館上映で、客もまばらだった。
『スウィート・スウィートバック』の制作インサイド・ストーリーだ。
メルヴィンの役を息子マリオが演じた。
閑散とした上映館(ポルノ専門)が、口コミで集まってきた客であふれてくるシーンは、やはり感動的だ。
彼らのほとんどはブラック・パンサー党員だった。
「メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは映画界のマルコムXだ」とする異見もある。
父親との葛藤と和解とは、ブラックシネマの重要なテーマの一つ。
そこに普遍への通路があった。
その点では、マリオ・ヴァン・ピーブルズはよく頑張ったといえるだろう。
最近は、役者としても精彩なかった。
この作品で、親父メルヴィンを演じて、親父と重なってくる部分がやはり、息子マリオのベスト演技。
皮肉なことだ。
おまけに、これは、監督作品としても、彼のベストではないか。
ベスト・パフォーマンスとベスト・フィルム・メイキング。それが70年代の伝説的映画への讃歌か…。
10年(今となっては、さらに10年の加算!)の落差に、ますます居心地悪くなる。
メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ『スウィート・スウィートバック』 [BlackCinema]
メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ『スウィート・スウィートバック』71年製作
1993年10月5日火曜
ブラックシネマ不朽の大傑作。ベスト・オブ・ザ・ベスト。
これを凌駕するものは現われないだろう。
この作品なくしては、ブラックスプロイティーションの時代も、『黒いジャガー』もパム・グリアも『吸血鬼プラキュラ』も、現われえなかった。もちろん、ブラックシネマの時代も…。
ポルノを撮るというふれこみで作られたブラック・メッセージ映画。
ヒーローは売春宿の用心棒。スウィートバックの仇名の由来は、バック(尻)のセックス・アピールだ。
ブラック・エロスの発露は、そのままホワイト・アメリカへの叛逆だった。
ファーストシーンは、娼婦に可愛がられる少年スウィートバックの童貞喪失。メルヴィンの息子マリオの映画初出演。じっさいにも「ヤッタ」という伝説が残っている。
いきがかりで白人のCOPを殺してしまったスウィートバックは、逃げに逃げる。
アスホールな白人国家にそのスウィートなケツを向けて。
逃亡こそが彼の存在の証しだ。
逃げつづけるメルヴィン・ヴァン・ピーブルズの肉体が「黒いペニス」そのもののように画面を制圧する。
その興奮。
そして彼は言う。
「Watch Out !」
スウィートバックはもどってくるぜ。カリを返すために。
画像は、制作ノート&対訳シナリオ&サウンドトラック版CDブックの表紙。
初期のアース・ウインド、ファイアが聴ける。
DVDなど、まだなかった時期。CDブックで我慢するしかなかった。
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メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは、この作品の前に『ウォーターメロンマン』を撮っている。
不条理におかしなブラック・コメディだ。
いずれ、このページで紹介しよう。
MVPの最近の作品に『アート・オブ・エロス』の一挿話『ブルーン・ブルーン・ブルーン』がある。
これはべつに観なくても損はしない。このオムニバス競作はニコラス・ローグの『ホテル・パラダイス』が目玉。他はなんだか信じられないような駄作が混じっている。ミカ・カウリスマキの『狂熱の白日夢』とか、ひどいもんだった。エロ映画だって性根入れてつくれよっての。
まあ、MVPには関係ないけど。
息子のマリオMVPがつくった『バッド・アス』に期待しよう。
ウォルター・ヒル『トレスパス』 [BlackCinema]
ウォルター・ヒル『トレスパス』92年製作
1993年4月28日水曜 公開直前の試写
正確にいうとブラックシネマではない。
観ようによっては「黒人は劣等人種だから」銃器のあつかいも知らん、という問題あるサベツ映画だ。
圧倒的な火器と人員を持って包囲しながら、たった二人の白人にやっつけられてしまう。
むかしの西部劇の「インディアン」と同じだ。
設定も展開も切れ味もほとんどムナシイけれど、出てくる黒人俳優の存在感が凄い。
主役じゃなくて脇役のほう。それだけでも価値ある。
監督の手腕は関係なかった。
アイス・キューブ アイス・T
二大ギャングスター・ラッパーの激突も、この筋立てじゃ生きない。
ギャングがギャングの役を演じても似合わん。ってわけでもないが。
http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-12-31
『ザ・エナミー・ストライクス・ライヴ』 [BlackCinema]
『ザ・エナミー・ストライクス・ライヴ』
パブリック・エナミー コンサート・ライヴ・フィルム
1993年4月8日 VIDEO
まあ、このころはエナミー一辺倒だった。
コンサートで観るとやっぱり、フレイバー・フレイヴのパフォーマンスがだんとつに目を引く。
チャック・Dだけのグループではなかった。
「ブラック・ナチ」と呼ばれるにいたった発言で話題になったプロフェッサー・グリフは脱退していた時期だったか。
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