『ニクソン』と『MISHIMA』 [映画VIDEO日誌2010-12]
2012.12.07 オリヴァー・ストーン『ニクソン』
ストーンのアメリカ史は、この時代を「狂人」ニクソンと「サイコパス」キッシンジャーの時代と命名している。
「パラノイア」ストーンの罵倒が当たっているかどうかは別にして、ニクソンになりきったアンソニー・[ハンニバル・レクター]・ホプキンズには、ビックリ。
しかも、ホプキンズは、次に、ヒッチコックになりきってみせて、ビックリは倍倍倍になった。
そういえば、ウッディ・ハレルソンの扮する『LBJ』が公開される。予告編では、それなりに「化けて」見えたが……。
昨今は、大統領を演ずる俳優が多すぎて。これも、トム・クランシー症候群(アメリカの癌細胞)の一つですかね。
12.18 ポール・シュレーダー『MISHIMA』
これほど下らないとは、この眼で観るまで想像もつかなかったお粗末。
下らなさは、市ヶ谷の決起の前、緒方拳とその一行が「唐獅子牡丹」を合唱するシーン(それも、狭い乗用車の中)で頂点に達する。
こちらはミシマ・ファンではないから、呆れただけで済んだが……。
ストーンのアメリカ史は、この時代を「狂人」ニクソンと「サイコパス」キッシンジャーの時代と命名している。
「パラノイア」ストーンの罵倒が当たっているかどうかは別にして、ニクソンになりきったアンソニー・[ハンニバル・レクター]・ホプキンズには、ビックリ。
しかも、ホプキンズは、次に、ヒッチコックになりきってみせて、ビックリは倍倍倍になった。
そういえば、ウッディ・ハレルソンの扮する『LBJ』が公開される。予告編では、それなりに「化けて」見えたが……。
昨今は、大統領を演ずる俳優が多すぎて。これも、トム・クランシー症候群(アメリカの癌細胞)の一つですかね。
12.18 ポール・シュレーダー『MISHIMA』
これほど下らないとは、この眼で観るまで想像もつかなかったお粗末。
下らなさは、市ヶ谷の決起の前、緒方拳とその一行が「唐獅子牡丹」を合唱するシーン(それも、狭い乗用車の中)で頂点に達する。
こちらはミシマ・ファンではないから、呆れただけで済んだが……。
『ロールスロイスに銀の銃』 [映画VIDEO日誌2010-12]
どちらも、70年代ブラックスプロイテーション時代の産物。
前者は、チェスター・ハイムズのハーレム警察シリーズの映画化だから、いちおうのスター・システム。
『吸血鬼ブラキュラ』の俗悪さ、チープさ、臆面のなさは壮観である。
おまけに、ドラキュラの「純血本家はブラックである」と宣言したのだった。
前者は、チェスター・ハイムズのハーレム警察シリーズの映画化だから、いちおうのスター・システム。
『吸血鬼ブラキュラ』の俗悪さ、チープさ、臆面のなさは壮観である。
おまけに、ドラキュラの「純血本家はブラックである」と宣言したのだった。
『MAD探偵 7人の容疑者』 [映画VIDEO日誌2010-12]
『ツナミ』の津波 [映画VIDEO日誌2010-12]
ロバート・アルトマン大会 [映画VIDEO日誌2010-12]
昔なら「名画座」通いの番組だが。
2008年あたりから、レンタル店に行く習慣もなくなり、もっぱらネット宅配で用が足りるように。
2008年あたりから、レンタル店に行く習慣もなくなり、もっぱらネット宅配で用が足りるように。
『キラー・インサイド・ミー』 [映画VIDEO日誌2010-12]
2011.02.10 試写
「THE KILLER INSIDE ME」を観てきた。
いや、たしかに衝撃のラストであった。
映像化不可能とか何とか。
「キラー・インサイド」が「キラー・アウトサイド」になって、映像化されると、ああなるんだろう。
ああなるしかないんだろうな。
原作テキストにも、たしかに「爆発する」という語句はあったし。
おれたちみんな。おれたちみんな。
考えてみれば、アレは一種の幻想シーンだと受け取っていたのかもしれない。
そのような読み取りは特殊だったのか。
ともかく、 BIG ジム・トンプソンは、見事に転生してきた。
いや、たしかに衝撃のラストであった。
映像化不可能とか何とか。
「キラー・インサイド」が「キラー・アウトサイド」になって、映像化されると、ああなるんだろう。
ああなるしかないんだろうな。
原作テキストにも、たしかに「爆発する」という語句はあったし。
おれたちみんな。おれたちみんな。
考えてみれば、アレは一種の幻想シーンだと受け取っていたのかもしれない。
そのような読み取りは特殊だったのか。
ともかく、 BIG ジム・トンプソンは、見事に転生してきた。
「THE KILLER INSIDE ME」は、30年前にも、いちど映画化されている。
バート・ケネディ監督、スティシー・キーチ主演。
バート・ケネディ監督、スティシー・キーチ主演。
フルタイム・ジョニー・トー [映画VIDEO日誌2010-12]
『バニシング・ポイント』 [映画VIDEO日誌2010-12]
2010.01.02 不死の映画館①
首都の外れの、観光でにぎわう古寺のすぐ近く。
さる公立学校が管理する農業用地の広大な敷地の片隅にその映画館はある。
常設館ではないから、それらしき看板などいっさいない。
上映する番組のスケジュールだって案内があったためしがない。
けれども、そこへ行けば必ず、他では観ることのできない作品と出会えるはずだ。
こんな贅沢なシアターは当節、ちょっと見つからない。
地図にも出ていないし、ファンたちの話題にのぼったこともないだろう。
厩舎にしか見えないから、たいていの人は気づかずにとおり過ぎていく。
ある時は、エリッヒ・フォン・シュトロハイムの『グリード』の四時間ヴァージョンを観たし、
また、ある時は、ライナー・ウェルナー・ファスビンダーの『ベルリン・アレクサンダー広場』を十四話連続で鑑賞した。
フィルムがいつも回っている場所。
それが不死の映画館だ。
これから綴るのは、そこで観た珍奇な作品についての感想だ。
首都の外れの、観光でにぎわう古寺のすぐ近く。
さる公立学校が管理する農業用地の広大な敷地の片隅にその映画館はある。
常設館ではないから、それらしき看板などいっさいない。
上映する番組のスケジュールだって案内があったためしがない。
けれども、そこへ行けば必ず、他では観ることのできない作品と出会えるはずだ。
こんな贅沢なシアターは当節、ちょっと見つからない。
地図にも出ていないし、ファンたちの話題にのぼったこともないだろう。
厩舎にしか見えないから、たいていの人は気づかずにとおり過ぎていく。
ある時は、エリッヒ・フォン・シュトロハイムの『グリード』の四時間ヴァージョンを観たし、
また、ある時は、ライナー・ウェルナー・ファスビンダーの『ベルリン・アレクサンダー広場』を十四話連続で鑑賞した。
フィルムがいつも回っている場所。
それが不死の映画館だ。
これから綴るのは、そこで観た珍奇な作品についての感想だ。
第一回の鑑賞記は、『バニシング・ポイント』。
なんだ、珍しくもないといわれそうな70年代的定番である。
DVDだっていくらでも出回っている。……んだが。
さて、お立ち合い。どうもこちらで公開されたのは99分ヴァージョンのみらしい。
例によってスペシャル・エディションのディスクも発売されているが、特典映像の付録がごっちゃりとついても、本編は、やっぱり99分のようだ。
ところが、ディレクターズ・カットとか大げさなことはいわなくても、『バニシング・ポイント』には、106分ヴァージョンがある。
どこが違うかというと――。
シャーロット・ランプリングが出ているか、いないかの違いなんである。
IMDbで調べると、彼女はヒッチハイカーの役で、「Scene Deleted」となっている。
カットされてしまったのだ。それゆえ allcinema ONLINE などでは、出演作リストに入っていない。
けれども「まぼろし」の出演シーンは、たしかに存在しているのだ。
一時間四十六分の映画の、一時間三十分あたり。そろそろ大詰めに近いところ。
ヒーローが道の傍で拾うスウィート・ヒッチハイカー。
ランプリングは「あんたの名前はコワルスキーなのね」とかの科白。
わずか五、六分の車内シーン、顔のクローズアップのみ。
このエピソードは他の部分とつながりがないので、カットしてしまっても話は通るわけだ。
ヒーローが爆発する直前に垣間見た幻影のようにも受け取れるシーンなのだ。
じっさい、タイトルバックに「co-starring CHARLOTTE RAMPLING」の文字を観た時、わが目を疑ってしまった。
これもまた、忘却の彼方に置き忘れてきた事柄のひとつなのかと。
で、ひたすら彼女の登場を期待しつつ観た。
しかし何となく憶えのある映像の連続のうち、いくら待っても彼女は現われない。
あきらめかけた。そして、映画がほとんどもう終わりかけてきた時間になっての登場だった。
初めて観るシーンだ。
納得した。
なるほど、流れが、ここだけ異なっている。一直線の破滅への道が、ここでゆったりと停滞している。
編集的にはカットして正解なんだが。やはり短縮ヴァージョンで満足していたのは不幸であった。
夢のなかのような映画館で観るフィルムは不死なのだ。
なんだ、珍しくもないといわれそうな70年代的定番である。
DVDだっていくらでも出回っている。……んだが。
さて、お立ち合い。どうもこちらで公開されたのは99分ヴァージョンのみらしい。
例によってスペシャル・エディションのディスクも発売されているが、特典映像の付録がごっちゃりとついても、本編は、やっぱり99分のようだ。
ところが、ディレクターズ・カットとか大げさなことはいわなくても、『バニシング・ポイント』には、106分ヴァージョンがある。
どこが違うかというと――。
シャーロット・ランプリングが出ているか、いないかの違いなんである。
IMDbで調べると、彼女はヒッチハイカーの役で、「Scene Deleted」となっている。
カットされてしまったのだ。それゆえ allcinema ONLINE などでは、出演作リストに入っていない。
けれども「まぼろし」の出演シーンは、たしかに存在しているのだ。
一時間四十六分の映画の、一時間三十分あたり。そろそろ大詰めに近いところ。
ヒーローが道の傍で拾うスウィート・ヒッチハイカー。
ランプリングは「あんたの名前はコワルスキーなのね」とかの科白。
わずか五、六分の車内シーン、顔のクローズアップのみ。
このエピソードは他の部分とつながりがないので、カットしてしまっても話は通るわけだ。
ヒーローが爆発する直前に垣間見た幻影のようにも受け取れるシーンなのだ。
じっさい、タイトルバックに「co-starring CHARLOTTE RAMPLING」の文字を観た時、わが目を疑ってしまった。
これもまた、忘却の彼方に置き忘れてきた事柄のひとつなのかと。
で、ひたすら彼女の登場を期待しつつ観た。
しかし何となく憶えのある映像の連続のうち、いくら待っても彼女は現われない。
あきらめかけた。そして、映画がほとんどもう終わりかけてきた時間になっての登場だった。
初めて観るシーンだ。
納得した。
なるほど、流れが、ここだけ異なっている。一直線の破滅への道が、ここでゆったりと停滞している。
編集的にはカットして正解なんだが。やはり短縮ヴァージョンで満足していたのは不幸であった。
夢のなかのような映画館で観るフィルムは不死なのだ。