1987年1月31日土曜 晴れ
 クリント・イーストウッド『ハートブレイク・リッジ』
 新宿
   
 ヴェトナム戦争映画が群れをなして公開されたような感のある年。
 その大方は反戦映画であったり、勝てなかった戦争へのトラウマ全開ドラマであったりした。
 イーストウッドのワンマン・ショー。
 「ついに勝ったぞ」の自信回復メッセージがひしひしと迫る感動映画だ。
 戦争大好き映画(オリバー・ストーンのこと)でも好戦イデオロギー映画でもないところがミソ。

 こういう時期もあったんだなってことか。
 1975年のヴェトナム敗戦から湾岸戦争の「圧倒的勝利」まで、アメリカ社会をおおった屈辱感の深さ。
 それをじつにうまくイーストウッドはドラマ化した。
 イラク戦争のような「絶対に勝てる戦い」に何故アメリカ国民があれほど異常にのめりこんでいったのか。
 この映画によって、その深層心理をいくらか理解できるような気がする。
 引き立て役に徹したマリオ・ヴァン・ピーブルズ、悪役にはまったエヴェレット・マッギルが光っていた。