アンソニー・マン 『エル・シド』  1962年

  
 これも70ミリ・スーパーテクニラマ
 史劇といっても、時代は中世。
 史劇はギリシャ・ローマ時代のイメージが強かったけれど、これは、イスラム教徒vsヨーロッパという図式だ。
 どっちにしろ、予備知識など何も持っていないのだから、つまり時代背景はなんだって良かったということ。

 なぜかラストシーンはあざやかに憶えている。
 死して馬上の人となって幾万の敵軍を畏怖させる
 ――この英雄伝説のパターンは『三国志』などにもあるごとくお馴染みのものだ。
 おかげでチャールトン・ヘストンは俳優というより歴史上の偉人のイメージでしか観られないようになった。
 『エル・シド』は彼のベスト。
 ご本人もこのラストシーンともども消え去ってくれていれば伝説がもうひとつできあがったんだが。
 
 マイケル・ムーアのドキュメント・フィルムに出てくる80歳のライフル・ゴリラがヘストンの「晩年」なのだった。