ウィリアム・ワイラー 『ウエスト・サイド物語』  1962年

  

 当時は、『映画の友』『スクリーン』とファン雑誌があって、毎号かならず読んでいた。
 話題作に関する記事は満載だったから、この映画もそうだったが、観どころ勘どころの書かれた文章はもう暗記してしまって、観るのはそれを確かめるためといったような鑑賞法になりつつあった。

 おまけにこの映画の場合、ミュージカルなので、主要な曲は観る前から耳に親しく入っていたわけだ。

 サウンドトラック盤のLPまでは買わなかったが、何かそれに近いものを持っていたように憶えている。
 そのあたり、まことに記憶がおぼろでしかないけれど、何曲かピックアップした17センチソノシートの付録つきの雑誌(いまでいうムック)ではなかったかと思う。
 ソノシートというのは、赤色の透明なレコードをペラペラに薄くしたもので、片面だけに溝がつけられてあった。
 現物は残っていないので、記憶は他のものとごっちゃになっているかもしれない。
  

 映画のさまざまな細部に関してはもちろんのこと、ソウル・バスのタイトル・デザインに注目したとか、少年愚連隊の一方の副長タッカー・スミスが気に入ったとか、通ぶった感想もそろそろ芽生えはじめてきたようだ。
 個々の場面や台詞などが自分のなかで驚くほど鮮明に残っている作品。
 大きな影響をこうむったということではないが、こんなふうに自意識の底に沈んでいるような「名作」をこの時期に数多く体験しているということだろう。