30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

『ガキ帝国』は名作だったんだな

 1982年2月6日土曜 曇り
 井筒和幸『ガキ帝国』     新宿

 快調なチンピラ青春グラフティ。よく考えれば、大阪在日映画の先駆でもあった。

 島田伸介・松本竜介のコンビに趙方豪がもうけ役でからむ。趙は京都のアングラ劇団満開座にいた役者。芝居での印象は弱かった。この作品から映画に転進。
一時期、日活ロマンポルノなどでよく見かけたが、残念ながら、ガキテイを超える突出はなかった。幻の作品『ガキ帝国・悪たれ戦争』は未見。


 けれどこの三人を食ってしまう存在感を見せたのは、升毅(ます たけし)だった。このあと、映画での活躍がつづかなかったことは惜しい。
 劇中、朝鮮語でとびかうセリフに日本語字幕が出る。こうした処理のみをみてもユニークな先駆性を持つ。井筒作品はデビュー作『ゆけゆけマイトガイ 性春の悶々』の湿っぽい基調から抜け出た。


 併映は根岸吉太郎『遠雷』。立松和平原作の文芸路線ではあるが、悪くはなかった。ジョニー大倉のベスト演技。