30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年11月21日日曜 曇り
 ベルナルド・ベルトリッチ『1900年』

 新宿


 歴史観なき歴史ドラマ。しかも五時間をこえる。
 大絵巻を魅せる豪華さはそれなりに備えている。けれどベルトリッチには歴史を動かすダイナミズムが何かという興味が本質的に欠けているのだろう。ところどころで苛々させられる。


 ロバート・デニーロもジェラール・ドパルデューもドミニク・サンダもバート・ランカスターもスターリング・ヘイドンも空々しい。いちばん儲け役だったのは戯画化されたサイコ・ファシストを演じたドナルド・サザーランドだったわけ。
 ハリウッド史観で通した『レッズ』と五十歩百歩か。歴史に学ばないのは、どうやら人類の本性なのらしい。それなら映画そのものを享受するにしくはない。


 その意味で、ポーリン・ケイルの『1900年』評が素晴らしかった。