マキノ雅弘『関東緋桜一家』
 東映やくざ映画には、毎年正月番組としてオールスター作品があった。
 主役が何人もいて、それぞれに見せ場を割り当てる必要があるので、作品的にはどうも散漫になりがちだ。
 後世に残るような名作は一つもなし。
 顔見世興行だから仕方がない。
 とはいえ、藤純子引退記念と銘打ってつくられた『関東緋桜一家』は、オールスター映画でありながら、空っぽな大作という以上の「感動」を与えてくれた。
 それが何故だったのかを考えてみると、つまり、この映画が「最後の着流しやくざ映画」の落日の模様を作品そのものにおいて見事に体現していたからなのだろう。