2009.09.01  友よ憐憫なくして

 あまり期待しないで借りてきた『マルセイユの決着』は、ちょっとした収穫。
  
 ジャン・ピエール・メルヴィル『ギャング』のリメイク。
 原作はジョゼ・ジョヴァンニ『おとしまえをつけろ』
  
 あらためてメルヴィルの『ギャング』を観直してみると、原作に忠実であったことに驚く。
 さらにリメイク版がオリジナルに忠実であることに、もっと驚いた。
 どちらも、映画としてえらく長いのだ。
 メルヴィル作品はジョヴァンニの最盛期でもあったから、原作のエピソードをあまり省略していないことの説明もつく。
 リメイク版はオリジナルより十三分長いので、ラスト・シーンに原作の情感を復活させるなど、あらためて原作者へのリスペクトを明確にしているのだ。
 (じつは、金塊輸送車襲撃とか、原作もオリジナル版も改変してしまった部分があるのだけれど、そこにふれると長くなるので、省略)。
 ただし、ラストの銃撃戦はいただけない。
 どうにかしてくれって気分。銃弾や血糊を派手にしてもそれはそれだけ、という空しい見本。
 これは、要するに、ヒーローを演じるリノ・ヴァンチュラダニエル・オートゥイユの、ノワール俳優としての格の違いでもある。元も子もない言い方だし、そんなことは観る前からわかってるんだが。
 死に際の美学とはまったく無縁の、恨みっぽい目つきでもたもたと何発も撃たれるオートゥイユを観さされると、これ、ひょっとして、ジョヴァンニへの冒涜じゃねえのか、といいたくなった。
 友よ、憐憫なくしてなぜ生きられよう。