一九八九年度ベストテン&ワーストテン
今日も黒い雨が〈世界映画ベストテン〉
①U2・魂の叫び(フィル・ジョアノウ)
②バード(クリント・イーストウッド)
③スウィート・ムービー(ドゥシャン・マカヴェイエフ)
④モンテネグロ(マカヴェイエフ)
⑤WR : オルガニズムの神秘(マカヴェイエフ)
⑥胡同模様(従連文〈ツォン・リェンウェン〉)
⑦一人と八人(張軍釗〈チャン・チョンチャオ〉)
⑧暗闇の子供たち(李長鎬〈イ・チャンホ〉)
⑨北京的西瓜(大林宣彦)
〈ワースト〉
①黒い雨(今村昌平)
今平は「楢山参り」で死んだと思っていたら、作家精神は商売根性にスライドしてたくましく生きているようであった。何を今さら反戦反核映画、それもモノクロだからまいるよ。いっそそれなら色彩面面にボタボタ落ちてくる黒い雨粒を効果的に映像化して欲しかったのだが。
テーマを失った巨匠が二昔前の平和祈願エゴの無着色映画に戻ったこともそれなりの計算なのだろう。全く馬鹿にした話だ。それで「世界」を相手取ろうというのだから。
わたしに関しては、日本映画もただの外国映画だから、垣根を取り払うことにする。そうしないと日本映画だけを各国映画に較べてキビしく選定する結果になるだろうから。公平にみてもやはり、ベストは選外、ワーストは一番、とそういう判断となる。この国の映画レベルでのみいえば、という特殊領域化で許し合うことは、もうやめよう。
必要以上に、日本映画を(プラスにしろマイナスにしろ)重大視する理由は何もないのだ。
一九九〇年度ベストテン&ワーストテン
〈映画ベストテン〉
①略奪の大地(リュドミル・スタイコフ)
②ドゥ・ザ・ライト・シング(スパイク・リー)
③グランドゼロ(パティソン&マイルズ)
④ホワイト・ドッグ(サミュエル・フラー)
⑤ニューシネマ・パラダイス(ジュゼッペ・トルナトーレ)
⑥風の輝く朝に(梁普智)
⑦菊豆(張芸謀)
⑧オープニング・ナイト(ジョン・カサヴェテス)
⑨地下の民(ホルヘ・サンヒネス)
⑩裏切りの明日(工藤栄一)
〈ワースト〉
①グッド・フェローズ(マーチン・スコセッシ)
『ワイズガイ』の映画化は期待したものだった。結果は、スコセッシも深作欣二の『仁義なき戦い』のような路線映画をつくってゆくのかという失望に終わった。『グッド・フェローズ』のドキュメンタリー・タッチは、たんに原作の異様な迫真性に敗けたことの結果でしかない。
やはり彼も『ミーン・ストリート』に戻ることはできないのだろう。
1990年12月 『アクロス・ザ・ボーダーライン』新稿