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『ミステリマガシン』ベスト3・2007年 [拾遺]

『北米探偵小説論』注釈 映画を探して19
(『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2007年度。この年度から規格が変わって、ランキング投票になってしまった。約20年間、好きに書いていた欄が消滅。やはり、時代の流れでしょう。したがって、再録もこの年度で打ち切りにする。)
『血と暴力の国』コーマック・マッカーシー
『ブラック・デトロイト』ドナルド・ゴインズ
『路上の事件』ジョー・ゴアズ

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 ゴインズの初訳にはびっくりしたが、やはり日本語になじまないな、というのが正直な感想。ハードボイルドの原義は「理解を拒絶する」ということでもあるし。ギャングスタ・ラップのライムの逐語的直訳を読まされているような気分になる。翻訳者の頑張りにもかかわらず、結果としてそうなってしまうようだ。
 たとえばアイス・Tが「おれがおれの女をビッチと罵ってもそれは愛の言葉さ、だが白んぼ野郎が同じ用語を口にすればそれはニグロをおとしめる差別言葉に変わる、わかるか」と言っているようなこと。こうしたメッセージを日本語で表記しても、きちんと理解可能な文章にならない。説明を尽くしても、正確なニュアンスが伝わらないのは同じだろう。
 チェスター・ハイムズくらい「様式化」するとか、W・モズリーくらい「白人化」するとかでないと、この国に黒人小説の根づく可能性はないのかもしれない。
 (不世出の犯罪小説作家[というか、犯罪者そのもの?]ゴインズの日本語版は、一冊で沈没した。ミステリの分野で注目したのは、おれ独りだったようで。版元からお礼を言われた他は反響なし。相変わらずゴインズは知られざる作家の上位に居つづける。ああ。
 同じベスト3で、別の雑誌に書いたコメントを、ついでに再録しておく。)
 マッカーシー作品への驚きが今年一年の収穫か。コーエン兄弟による映画化は、やっぱりイヒヒと笑ってしまうようなものになるのだろうか。



 それにしても、『極大射程』⇒『ザ・シューター』には、観る前からがっかりで(『猿の惑星』リメークかよ)、映画館まで馳せ参じるに到らなかったが、観た後は「ま、こんなもんでしょう」の気分だった。
 ちなみにレンタル屋にはまったく同名の新作が隣りに並び(いいのかね)、そちらはウェズリー・スナイプス主演。スナイプスのアクションも、このところ下降線一方だから、どっちもどっちってところか。
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