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『ミステリマガシン』ベスト3・2002年 [拾遺]

『北米探偵小説論』注釈 映画を探して10
『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2002年度。


1 『映画俳優 安藤昇』山口猛 ワイズ出版
2 『セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの悪童』クリストファー・フレイリング フィルムアート社
3 『わたしは邪魔された ニコラス・レイ映画講義録』スーザン・レイ編 みすず書房

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映画というかつてあまりにも神々しかったロマンスに身を捧げた男たちの伝説記録が三本。あまりに傍若無人に「敷島の大和オノコの往く道」を駆け抜けていった安藤。あまりに猥雑で滑稽で、しかも悲劇というほかない映画人生を送ったレオーネ。あまりに苦い片想いの断片を遺したレイ。いずれも個人の軌跡をこえて立ちのぼってくるのは、二十世紀のなかばを荒々しく席捲した文化事象への洞察だ。勝者は何も手にしない。とくにレオーネをめぐる大河小説にも匹敵する書物には、粛然とさせられた。
レイが思い浮かべる最良の墓碑銘は《生まれ/生き/阻まれた》というものだ。何から阻まれたのか。もちろん最愛の、映画の女神からだ。自分は心から満足のいく作品をただの一本も撮ったことのない世界一のロクデナシ映画作家だと自嘲するレイ。映画が人生に与える果実を、彼は充分には享受できなかったと言うのだ。死の床に横たわった彼を記録したヴィム・ヴェンダースのフィルム『ニックス・ムーヴィー ライトニング・オーヴァ・ウォーター』のレイが思い出されてならなかった。


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