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『ミステリマガシン』ベスト3・2005 [拾遺]

『北米探偵小説論』注釈 映画を探して13  『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2004年度。
『明かりが消えて映画がはじまる』ポーリン・ケイル
『68年の女を探して 私説・日本映画の60年代』阿部嘉昭
『クリスチャン・ボルタンスキー 死者のモニュメント』湯沢英彦

三冊とも、憑かれた者たちの記録だ。
ただし③に関しては、筆者がではなく、書かれた対象が、である。ボルタンスキーの謎に迫った初めての本だ。そして①も、ケイルの何点目かの映画論集であり、それほど常軌を逸したものとはいえない。
やはり②である。極私的映画論。その凝視の執拗さ、分析的ディテールの集積で圧倒する。「68年の女」というテーマ、これが読めば読むほどわからなくなるという無類の追跡ぶりだ。官能のありかを探って己れの晦渋な内面に分け入っていく。この妄執は確かに心を打つものがある。たとえば大和屋竺『荒野のダッチワイフ』論。解読の快楽のクライマックスが難解しごくな饒舌の総仕上げのように「差異性と無差異性」という耳慣れない用語に収束していくと、こちらはすっかり著者の独演に取り残されてしまう。見事に全ページその質感だ。
批評家とはどんなに下らない映画からでも達者な一家言を披露してみせる存在なのだ。

そうか。「68年の女」ってゴダール『気狂いピエロ』のアンナ・カリーナじゃなかったのか。

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