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『ミステリマガシン』ベスト3・2007年 [拾遺]

『北米探偵小説論』注釈 映画を探して16  『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2006年度。


『王になろうとした男』ジョン・ヒューストン
『レッドパージ・ハリウッド』上島春彦
『裏社会の日本史』フィリップ・ポンス

 ① 坂口安吾、ディクスン・カーと生誕百年の伊達男が並んだ2006年だったが、この人もそう。正直いって監督作としては『マルタの鷹』以外にそれほど特記したいものはなく(初めて観たのがインディアン標的西部劇『許されざる者』だったせいか)、『チャイナタウン』での快演の印象のほうがたちまさる。自伝はどうかね、とページをめくってびっくりだった。なんと彼の人生のほうが作品より数倍も面白いのだ。なるほど「撮られなかったフィルム」の物語はその実人生のなかにあったか。
 ② 赤狩り時代の映画作家について、これほど広範で立ち入った研究にふれるのは初めてだ。これまでの文書はどれも部分的かつ党派的でしかなかったわけだ。著者の執念と努力に脱帽した。この本を読むまで名前を知らない人物もいたが、複雑なネットワークのなかでそれぞれが脚光を当てられる記述をとおして既知の人のように輝いてくる。すべて世界には脚注的人物など一人もいないのだと納得。たんなるインサイド・レポートに終わらない濃密な人間ドラマだ。子供の時に観た『大砂塵』という映画のラストがなぜあんなにミザリーだったのか、長年の疑問も氷解。
 ③ 犯罪社会からみた日本の通史。学問的興味にとどまらず、寄せ場の実態などを捉えるジャーナリストの姿勢に独自のものがある。

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