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『ザ・コンヴェント』 [afterAtBL]

フィルム いかにも人工的にちかちか光る血のりのオン・パレード
『ザ・コンヴェント』(マイク・メンデス監督 1時間20分 シネ・アミューズでレイトショー公開中)
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 斬り飛ばされたゾンビの首はいかにもセルロイドのまがい物といった感じで床をころころと転がる。えーと、首はなんかい斬り飛ばされたんだっけ。まるで同じカットを使ったんじゃないかと疑わせるくらいに、よく似た首ころころ。そのつど首のつけ根から血がブピュー。
 いかにもいかにも手抜きみたいな特殊メイクで、しかも血は蛍光インクみたいにきらきらと飛び散る。プラスティック・スプラッタだな。きらきらと安っぽいきらめきこそこの映画の売りであり、内容のすべてであり、さらにいえば先行するホラー作品への批評性そのものである。

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 ここには良識に対応するような生真面目さはいっさいない。初めからそんなものを期待してはいけない。お約束に従った俗悪なシーンなら満載だ。
 頭部消失、内臓炸裂、○ン○噛み切り……。
 それら全部がピカピカと瞬いている。目が光り、牙が光り、目元からしたたる血が光る。電撃バチバチでなんとあっさりと人間がゾンビ化するので、あまりの安直さに笑ってしまいたくなる。

 40年前、謎の大虐殺によって閉鎖された敬虔な修道院。今では、若者たちが都市伝説の震源地としてお気楽に利用している。酒とマリファナと性欲に酔ったエロ学生どもが深夜にしのびこんできては悪さをするのだ。
 おりしも飛び入りのオカルト処女がゾンピ化されたのをきっかけに、グループのほとんどが次つぎとゾンビの餌食となっていく。

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 と、話はもちろん単純明快である。逃げ出した女が警官に救助を求めると、マッポは拳銃を乱射して彼女を追い払ってしまう――気に入ったシーンですね。

 ホラー・ムーヴィからの引用とそれへのオマージュが際立つ。たんなる受け継ぎとは違う。脂ぎった血みどろではなく、いかにも人工的にちかちか光る血のりのオン・パレードは、まがい物の透明感によって、よりチープなホラー映画史を目の前に批評的に展開してくれる。

『ミュージックマガジン』2001.6

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